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第一章 第一話 「なぜ、木宮商店を始めたのか?」

第1章 第1話
「なぜ、木宮商店を始めたのか?」

お店を持つことは、昔からの夢だったわけではありません。
20歳を過ぎてアパレル業界に入り、販売員として働き始めた頃、ぼんやりと「いつかお店をやってみたいな」と思うようになりました。

特別な理由があったわけでも、明確なビジョンがあったわけでもない。だけど、日々の現場で感じる“違和感”が、その想いを少しずつ現実に近づけていった気がします。

あるとき、当時の社長に言われた言葉が今でも忘れられません。
「給与っていうのは、責任の対価なんだよ」と。
確かにその通りだと思う一方で、現実としては業務量もスキルも増えているのに、給料は一向に上がらない。責任ばかりが膨らみ、評価は変わらない。
この言葉を聞いたとき、「ああ、自分たち販売員は、どこまでいっても“消費される側”なんだな」と感じてしまいました。

販売員は、アパレルの最前線です。
でも、そのわりに社会的な評価は低く、将来のキャリアが見えにくい。現場にいる時間が長いほど、その矛盾に直面します。

一緒に働いていた仲間たちの中には、辞めていく人もたくさんいました。
でも、実を言えば、本当に熱を持っていた仲間は、今でも業界に残って頑張っています。
一方で、「好きで始めたけど、やっぱり違った」と言って去っていく人も多かった。
辞めるときはみんな、一丁前なことを言うんですよね。「業界が悪い」 「会社が合わなかった」って。でも、それって諦めてるだけじゃないか?って、当時の僕は思っていました。

そんなに簡単に諦められるような業界であってほしくない。
ちゃんと人が夢を持ち続けられて、誇りを持って働ける世界であってほしい。
そして、それを現場レベルから変えていくには、「お店」という現実的な単位でやるのが一番だと思いました。

だから、木宮商店を始めたんです。

熱が循環する場所。
好きで始めた人が、好きなまま続けられる場所。
木宮商店は、そんな願いの結晶です。



●編集後記
今振り返ると、「販売員の地位を上げたい」と思っていたのは、自分自身がそこで苦しんでいたからでした。
でも今は、販売員がどう評価されるかよりも、「なにを見ているか」 「なにを届けようとしているか」が大事なんだと思うようになりました。

数字、想い、接客、文化。
それらを往復することが、商いの本質なんじゃないか、、、
そんなふうに考えるようになった今、地位そのものにこだわる気持ちは、少しだけ手放せてきた気がします。